十時前、自宅を出る。
途中のファミリーレストラン前で五十代後半夫婦と思しき二人連れが
朝だというのに黄昏れた雰囲気を醸しているのを見かける。
私の目的地はすぐそこで到着してしまうと時間潰しが必要となり
黄昏夫婦のいた店へと向かう。
数分前にテーブルに案内されたらしい彼らは既に別人で
それはもう嬉しそうにメニウを繰っていた。
店の営業時間は午前十時からで先の二人の漂わす暗い空気は
単に開店を待っていたためらしい。
どれほどの空腹か、その喜びようは何だと思いかけて
店内に陰気を持ち込まれるより良いことに気付く。