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火星の顔、黄色のビニルコート。 [愚]

Friday , 10 apr 2009

乳児の頃の彼女は岩石みたいな顔をしていて、果たして人間かという写真が数枚残っている。
三歳を過ぎると岩石が溶けるか砕けるか或いは魔法が解けるかして、愛らしい顔立ちとなった。
さなぎが蝶に変わるより余程劇的な変化であるが、後で写真を見て気付いたに過ぎず
岩石であっても人間らしき形になっても、私たちの関係に変わりはない。

そこそこ話の合う友人に似た存在の彼女は
続柄がそうあるだけで妹という感覚は殆どないが唯一の肉親である。
そこそこ話が合うということは話が合わぬこともそこそこあるということで
殆どない妹という感覚もほんの少しは持っている。

彼女はある時期、様々な扉を閉じ、活動範囲を極端に狭めていた。
それが健康なことかどうか、私の給料で賄う生活がいつまで続けられるか案じる程度に。
他に頼るものがないことを考えれば何を端緒に共倒れとなるか知れたものでなく
互いの在り方を変える必要があることははっきりしていた。

私は家を出た。
考えがあってのことでなく、単に他での暮らしが楽しかったに過ぎない。
従前通り生活費を渡すだけで、特別なことは何もしなかった。
数か月のうちに彼女は仕事に就き、主だった問題は消えた。

このやり方は彼女を傷付けたかも知れない。
私も頑張ってしまえば格好は付けられた。
しかし、そこに彼女を守ってやれる保障は何もない。
あなたの支えは実に頼りない腑抜けだと知らせるほうが親切だ。
何が最善とは言えぬけども、結果的には悪くなかった。

「叩けよ、さらば開かれん」それだけが答えではない。

2009-05-17 08:40 更新
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