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回転扉の軋む夜。 [愚]

Tuesday , 11 august 2009 gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

ここ数日、普段より長い時間を夏の陽射しの下で過ごした。
日ごと、水へ絵の具をひとしずく落とすように、徐々に肌の色が濃くなった気がする。
バナナの食べ頃を示すという斑点と異なり、薄く淡いヒジャブで肌を覆う感じである。
宗教的な制約は何もなく、紫外線の後々の影響を案じる程度のことでしかないけれども。

戦利品か盗掘かと言うだけ言って、取り敢えず行っておくかと「トリノ・エジプト展」へ。 
パピルス、ツタンカーメン像、ステラ、内臓用容器、数々の棺、牡羊の頭、木乃伊を見る。
棺の蓋のつま先辺りのつくり、木乃伊を巻いた布に浮き出る脂肪のような染み
Άνουβις などがやはり興味深い。展示物の四方八方から眺めに眺め、メモをとる。

Άνουβις ヒエログリフ

同行者は直ぐに退屈して、疲れたとか私の騒がしさにうんざりとか目覚めたまま寝言を言う。
確かに海のエジプト展のほうが面白いという説もあるにはあるが人伝の話に過ぎず
今更確証のない戯言に行き先を変える訳もなく、なるべく反感を買わぬことを心掛けてみる。
公式カタログは買ってみたかったが「木乃伊の作り方」を学んでも実践は犯罪になりかねず
では実用的であればいいかというとそうでなく Άνουβις を模したボウルペンを買う。
ボウルペンそのものも、極小ピラミッドがペン立てというつくりも、大いに気に入る。
ボウルペンというより装飾品的扱いの厳重な梱包をいつ解くべきか迷うほど気に入る。


散々好き勝手をしている間に同行者へ散々な思いをさせたらしかったので
何ひとつ逆らうことなくおランチに焼き肉店へ行く。
奢るという言葉にも全く逆らわず、炭火でロース、フィレ、カルビなどの肉や海老を焼く。
隣のテーブルの女性はひとりで来て、ひとりで肉を焼いていた。おそらく、自費で。
誘われて肉食の私にとって、彼女はポケットにビイフ・ジャアキイ常備な肉の虜に映る。
マンモスの肉を注文せぬか期待するが、そうしたことはなかった。
マンモスの肉がメニウになくて。


同行者には香炉の煙を頭に浴びて少しでも賢くなんて策略があり、食後は浅草寺へ向かう。
煙を浴びぬまま歩くので賢くなさを存分に発揮、仲見世の店々にいちいち目を奪われる。
ボールの落ちた穴に書かれた数だけ飴が貰えるスマートボールを試みて、1の穴へ落とす。
缶詰のみかんを空色の水飴で包みモナカの皮にのせたものひとつを受け取る。
氷の上に置かれていた飴はどれも人工的な色をして、少し冷たく、大分やわらかい。
ただ青く、ただ甘く、何か毒々しい。2や3の穴にボールを落としては災難である。
負け惜しみでなく。

仲見世手焼き煎餅

焼きたての煎餅はバリバリと音のする堅さで齧り甲斐がある。
何ならその噛み応えと鼻から抜ける醤油の香りだけで充分、敢えて食す必要はないと言う。
ムゲンプチプチ、ムゲンペリペリは所詮こども騙し、ムゲンバリバリこそ実用化すべきだ。
無駄なカロリーを摂取せず、煎餅の感触が得られ、顎を鍛えることが出来る。
実に健康的な玩具と成り得る。提案者の私であっても、実際に買うか、疑問だけれども。

飴屋手焼き人形焼き屋

機械を使わず手焼きにこだわる人形焼きの店は硝子越しに焼く様子を見ることが出来る。
じっと見つめていると、中の職人は隔てる硝子を消し去る笑顔で手を振ってよこす。
私の知る、どの観光地で商売をするひとよりも、仲見世のひとびとはひとあしらいが上手い。
買う買わぬで変わらない言葉遣いや親しみやすさは上辺だけの印象がなく、感じがいい。
何かきっと買うものがある筈と別腹やなんかをさぐってみたくなるくらいに。

そろそろ同行者を賢者にしてやるかと香炉へ向かう。
私も気休めに手足、腹、背中、顔、頭などに煙を手繰り寄せてみる。
ものはついでと「御籤箱」を揺らすと「百番」と書かれた棒が出てきて、キリがいい。
さては奇利でもと思えば御籤は「凶」で
世を捨てたるてい、心虚しく呆然として途方にくれたるてい
願叶いがたし、病人あやうし、失せもの出がたし、待ちびと来たらず、旅立ち悪しく
なんてことが書き連ねてあった。知るかよ、どうでもいいよ。

御籤 百番浅草寺天井絵 天女

ゲホゲホと咳き込みながら「花やしき」へ行く。
何かいろいろ見捨てられたらしい私はひとり「ローラーコースター」に乗ってみたりする。
1953年製、現存する日本最古、最高時速42kmなどと考える間もなく一周していた。
「きゃあ」とか何とか叫んでみたかったが、へらへらしてる間に終わっていた。
同行者が「これなら」と言ったのは「Beeタワー」という1950年製箱形の乗り物で
中途半端な上空を回る暢気さは、余裕のようで絶命の間際のようで、感情を曖昧にする。
「ハナハナ海賊団アサクサビーチで Von Voyage! 」の意気込み振りに戸惑うのに似て。

ハナハナ海賊団ハナハナ海賊団員
気分を明確に高揚させるなら、かき氷ではと場所を変え、山盛りのそれを食す。
山をどうにかすることに熱中して気付かずにいたが、食べ終えた途端、寒さに震える。
内臓が縮みたがって背筋は伸びず、指先から心臓へと徐々に冷たくなっていく。
彩色の木棺をひとつなどと、黒蜜でダイイングメッセージする勢いの死体化が進む。

アサヒスーパードライホール 炎鞍馬しぐれ 黒蜜きな粉蜜かき氷

やばいよやばいよと慌てる他者の張った湯にダイヴして命拾いかと思えば熱湯で
きりきり、てんてこと舞いに舞い、どこが死にかけだってなマイマイカブレ。
消防ホース並みの放水でぬるま湯を拵え、仕切り直し、頭の天辺から足の先まで潜る。
ぬるま湯に浸かるのは心地よく、浸かり放しのひとがいるというのも肯けるなどと
耳に水の入るのを気にしながら息が切れかけるまで潜る。 2009-08-31 11:55 更新

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