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おばあちゃんちのにおいさめのむれ。 [ずっと、ずっと、前のこと]

Sunday , 1st August 2010  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

物心ついてから暫く、よく通った家がある。
父の仕事に関係する知り合いの家で
私はそこを「おばあちゃんの家」と呼んでいた。
おばあちゃんの家にはおばあちゃんの他に
大人とこどもがそれぞれ4、5人いて
誰が父母で誰がどのひとの子というようなことは
よく分からなかった。

はっきりしているのは
私が実の祖母よりずっと多く
おばあちゃんをおばあちゃんと呼んだことと
ひとりだけ溺愛する孫娘の次くらいに
おばあちゃんが私を可愛がってくれたことだ。

おばあちゃんの家には
私と然程変わらぬ歳の孫娘が幾人かいたが
おばあちゃんの買ったピアノに触れていいのは
溺愛の孫娘と私のふたりだけで
溺愛の孫娘のひとつ違いの姉は
ピアノへ近寄ることすら許されていなかった。

普段オルガンで練習している私は
おばあちゃんに「弾いてごらん」と言われて
ピアノの前に座るのを喜んだが
同時にピアノへ近付けぬひとのいることに
息苦しさも覚えた。

おばあちゃんから
飼い猫ほども目をかけられぬそのひとは
離れたところからピアノを弾く私を見ていた。
私が誤った鍵盤を叩いても
表情を変えずに見ていた。

彼女は耳が聞こえなかった。 2010-12-23 19:45 更新

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