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爪の伸び、髪の伸び。 [愚]

Friday , 15th October 2010  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

ようやく自宅へ戻る日がやって来た。
朝食の支度などしていると
隣家の小学生が通学前に別れの挨拶を告げに来る。
ジャイ子の温めた冷凍食品を食したり「はなかっぱ」を見たりと
多忙な彼の朝に都合をつけ別れを告げに来る。
と言うと冷凍食品の朝食に批判的と思われるかしれぬが
昨今のそれは味覚に栄養に相当工夫されていると聞く。
「毎朝食が冷凍食品」は
同居人母が孫を不憫がる恰好の材料に過ぎぬと見ている。

話を小学生に戻せば無闇に飛び跳ねてみたり
私が着ている服の裾を引っ張ってみたり
自身の口の中へ自身の右手指五本を突っ込んでみたりしてから
「学校へ行ってる間に帰っちゃうんでしょう」に続けて
型通り「また来てね」などと言う。
正直であろうとするなら
「また来られたらね」としか返答のしようがない。
やっと帰宅できる喜びに満ち満ちているなんてこともあるが
我々を取り巻く諸事情は果てしなく厳しいのだった。

自宅より1000km 離れたここへは早春より6度来ており
極端に人口密度の高いところへ身を置くと石と化す病の私は
移動のたびグリーン車なんてものに乗らねばならず
また礼服やら靴やら一式揃えるなどして
その経費たるや
グルグルスプリング付きびっくり玩具に負けず劣らず
びよよよよんと目玉の飛び出る勢いであって
重ねて同居人共々宵越しの銭は持たぬ困った性分
ふたりして全財産の殆どを使い果たしていた。
残された移動手段は日野自動車ではなく火の車のみ
軽々しく「また来る」と言う訳にはいかぬのである。

掻い繰り掻い繰りしたい相手であれば
甲斐性の無さを恥じ入るところか知れぬが
溺愛の両親が天才のなす業と信じる
思案に思案を重ねる盆栽の剪定的ぱちんぱちんな
遅々たる指運びのソロバンを幾度も見せつけられていて
そんな得意技も文字通りの親馬鹿も存分に見飽きており
理由が何であれ
暫く彼らと遭遇せずに済む身分に満足していた。

ランドセルを背負う彼に「バイバーイ!」と言うとき
ここ十日くらいのうちで一番爽やかな感じの声が出た。 2011-08-03 14:45 更新

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