雷紋の格子の引き戸のゼラニウム

Wednesday, 3rd June 2020

七時前から八時過ぎまでかたつむりの歩みで散歩した。作物が何も収穫されなかったのか、畑脇の無人販売にひとつの野菜も置かれていなかった。過日、カラー二輪とアルストロメリアの黄とピンク一輪ずつの合わせて四輪が百円で売られていた庭先へ寄ってみたけれど、そこも何ひとつ置かれていなかった。

アルストロメリアは花束に入っていると嵩増しのように思う偏見があった。いつか花屋で花束を頼んだとき、あまり好きではないのでアルストロメリアは入れないで欲しいと頼んだら、専門家のセンスに任せられないとはと割と感じ悪くため息をつかれ、はじめにこのくらいと示されたより随分小ぶりな花束が出来て、大きくするにはアルストロメリアが要るらしい、代わりに加え得る花はないらしい、嵩増しの花なのだと思った。

カラーを目当てに百円の花を持ち帰ったけれど、カラーとは分けて、アルストロメリアだけをコップに挿すとなかなかの華やかさで、可憐でもあり、長いこと誤解していてごめんなさいという気持ちになった。花屋も怒り任せに不貞腐れず、良さを教えてくれればいいじゃんね、とも思った。

花屋で買うカラーは直売所のものより短命で、直売と言うだけあるなと感心していたが、庭先のものはそれよりも長持ちした。好きな花を自分で育てると好きな花を長く楽しめるようだ。花が咲く前も咲いたあとも、長い時間をかけての世話があってのことだろうけれど。

ときに地面に移植ゴテが突き立てられていて、世話が嫌になって蒸発したのかと思う。せっかくの花壇やプランタに花々と並べ立てる意図が不明で。手慣れた感じの演出か、直ぐに戻る合図かわからないけれど、私にはちょっと煙草を買いにと言って帰ってこない、そう見える。

別の花屋でのこと。お金が少ししかないとき、花屋の前を通りかかり、見かけたバラの美しさに強く惹かれた。これを飾ったらどんな気持ちになるだろう。聞くだけ聞いてみようと花屋へ入りバラの値段を聞いた。持っているお金全て合わせて二輪ギリギリの額だった。二輪だけ買わせて貰えますかと聞くといいですよと売ってくれた。嬉しかった。
店を出かけて、私にバラを売ってくれたひとが店の奥にいる妻らしきひとから｢そんなことやってるからうだつがあがらないんだよ、タコ｣と罵られ、随分な言い方だと思い、私のせいで悪かったと思い、また、私に聞こえて構わないと思って言っているよねと思い、切なかった。何本なら許されるのか。

花は無くても生きていかれるもので、それでも要ると思うには興趣やら滋味やらを求める何かしらがある。買うときに丁寧さはあって欲しいし、親切であれば有り難い。

野菜と花が空振りだったことに加え、一時間誰ともすれ違った気がせず、地球最後の生物になったかと思う。と、黄色い壁の家から七十代男性らしきが出てきて、目潰しされそうな形の手をこちらへ乱暴に突き出し、ふたっついるなと犬の数を確認してきた。頷いたけれど、更に、ふたっつだなと言う。そうですよと答えながら急ぎ足。
これは、もう、何回も繰り返された確認で、何故二匹であることに注目するのかわからない。すれ違うひとたちによく聞かれるのは兄弟かどうか辺りで、何故見てわかりそうなことをと思うけれど、様々なものが二重に見えるなどして一匹が二匹に見えてしまう不安があるのかしら。白と茶の色違いで。

帰って九時前、朝ごはんに油揚げとほうれん草と胡麻のスパゲッティを食べた。麺つゆを添えて。犬には豚肉とほうれん草とじゃがいもとマグロ節と魚ベースのドッグフードをあげた。

午後は内科へ通院。順路のように血圧と体重を測り、尿と血液を検査へ回す。殆どの患者がその仕組みのうちにいるので数をこなすせいか看護師の誰もが手際がよく採血が上手い。そこは本当によい。
ただ、漫然と検査され漫然と同じ薬を出されるばかりで、検査結果も体調も改善しない。看護師から次回は心電図とレントゲンもと言われ、次は診察代金がかかりそうだとだけ思う。

夕方、十八時前からかたつむりの歩みで四十分強の散歩。人類は割といる感じだった。無事に帰宅した。

夕食にスクランブルエッグと茄子のケチャップで味付けしたスパゲッティを食べた。犬にはスクランブルエッグと豚肉とほうれん草と魚ベースのドッグフードをあげた。白犬のごはんを茶犬が盗み食いしたので、白犬にスクランブルエッグを追加した。

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