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フローズンウルフパピーマミー [犬のこと]

Tuesday, 22nd December 2020

茶犬の通院日で家畜病院へ行った。今はそう名乗っていないけれど、門柱の銘板には家畜病院と書いてある。ウィンナーか何かの原材料に畜肉とあるのを見たときに似て少しドキッとする。茶犬はC反応性蛋白に大きな改善があったものの白血球数、好中球数、好塩基球数が継続して基準値外だった。薬が効いているようだけれど、安心はできない。寒くなっても関節の症状が殆どない、と言うと、寒いときに歩かないのがよくはたらいたと思うとのことで、サボった気でいたものの、現状通り昼の暖かい時間に少しの散歩がよいらしい。体重は3.78kgで先月比-100g、腹ペコちゃんに化けたのに太っていなかった。腹ペコちゃん具合が少し落ち着いてきて、常に空腹から、一日のうちで何回か超ガツガツくらいになっている。前回受診から嘔吐はグルウミング翌日の一回だけ、検査数値を除けば安定して見える。

ついでにと四年通うよしみで白犬の歯を診てもらう。やはり、早めの歯科受診を勧められた。大抵真面目に歯磨きをしてきたけれど、私自身に余裕のないときなど歯磨きペーパーで済ませてしまうことが少なからずあった。ドライフードだけならともかく、肉や野菜をあげているので、より丁寧な手入れが必要だった。真面目な歯磨きと言っても、私は不器用で白犬は歯磨きが嫌いで、部位によっては不充分かもしれない。もっと早くどうにかすべきだったと落ち込むけれど、九歳ならスケーリングの全身麻酔も躊躇しない、年齢が上がると危険度が増すと聞いて、これから出来ることをしていくよりない。ちゃんとした面倒の見られる人間でなくて犬に申し訳ない。

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2011年の11月頃、Pさんの買い物で普段あまり行かないホームセンターへ行き、通りがかりのペットコーナーに犬を見て足が止まった。どれだけ自惚れているのだと思われるに違いないけれど、そこにいたポメラニアンがあまりに私にそっくりで、びっくりしたのだった。ちょっと勘違いかもしれないけどと断ってからPさんに「あのポメラニアン、私そっくりに見える」と言ってみた。否定されるなり馬鹿にされるなりあって当たり前なのに「どこをどう見てもそっくり本当にそっくり」と同意された。帰宅して、同居人へ、私によく似た感じの犬を見たと話して、一緒に見に行くことになった。同居人も私にそっくりだと言った。

犬と暮らしたいという希望はずっとあって、でも、世話や躾が出来るのか養っていかれるのかを考えて決心出来ずにいた。けれど、自分そっくりに見える犬が真っ黒な目で私を見つめるとき、これは、と思う。奇跡か、運命か、何を馬鹿な。ひとりで思ううち同居人が、このコはウチで暮らす以外ないんじゃないと言った。うーん、犬と暮らしたいと思ってきたけれど、シェパードとかラブラドールレトリバーとかとフリスビーをするイメージを思い描いていた。ポメラニアンか、私にそっくりの。同居人と見に行くと決めた時から結果は見えていた気がする。それでもちょっと考えてみようと言って、一旦家に帰った。いつかは犬をと考えていたのだし、あの犬は何処にでもいる犬とは違うし、大型犬の運動量を思えばフリスビーしたいだけで迎えるのは無茶だし、というようなことを話し合って、間違いないように思い、ポメラニアンと暮らすことにした。

翌週、ホームセンターへ行ってポメラニアンが欲しいと言った。ペットコーナーで対応してくれたのは最近責任者になったばかりという二十代半ばくらいの女性だった。確か、風邪っぽい気がする、赤ちゃんなので様子を見たい、直ぐには渡せないから二週間くらい待ってほしい、内金を払えば売約済みと出来るけれど、そうでないときは他のひとへ売るかもしれないと言われた。こちらとしては決定事項なので内金一万円を払った。払うとき、このお金は解約となっても返金できないとの説明があった。そんなことは起こり得ないとすっかり家族のような気でいた。

二週間が経とうとする頃、咳と鼻水が続くと一週間延長の電話があり、数日後には下痢があると更に延び、様子だけ見に行くと膝関節と股関節に異常があるようだと言われる。いつ引き取れるか決まらないまま、しゃっくりがとか頭蓋骨がとか具合のよくないところが増えていく。もう家族なのだから見捨てる訳にはいかないと思いつつ、私に面倒を見られるのか不安な気持ちが膨らんでいって、何をどうするのがよいか解らなくなった。それで犬のことならと思うひとに相談した。あっさり、普通なら飼わない、そう言った。本当は自分でそう決めるべきだけれど、出来なかった。それを見越して言ってくれたのかもしれない。同居人にはこういうひとがこう言っていると伝え、話し合い、ポメラニアンを諦めた。苦労を逃れた選択なのに悲しさがあった。責任者になったばかりのひとが責任感から不都合なことも全て教えてくれたものと思うけれど、引き渡す日がいつまでも決まらなかったのもただの善意だったのか、よく分からない。

同居人は犬と暮らしたことがなく、相当楽しみにしていて、犬が来ないと決まると気の毒なくらいがっかりした。それを見て、ラーメン屋のマスターが何処其処に評判のペットショップがあると教えてくれた。直ぐにふたりで行ってみて、ポメラニアンはいたものの、思い入れのあるポメラニアンのあとで心が動かなかった。あんな子はそうそういないね、そう言って帰ろうとして、店員がトイ・プードルはどうですかと言ってきた。誰も彼もトイ・プードルを連れている気がして、流行りの服を着るかのように犬を選べない、そう断る。でも、可愛いですよと言って三匹の仔犬を見せた。ちょっと抱いたり撫でたりして確かに可愛かった。消沈していた同居人も楽しそうである。終いには、どうしようかなと迷い始めている。連れて帰りたいのか聞くと頷く。仔犬を抱かせてその場の気分の高揚で買わせようとするのは良心的でないと聞いており、今ここで決めるのはよくない気がする。けれど犬を抱き可愛いと喜ぶ同居人に、今日はやめておこうと言えなかった。

犬が来ることは決まっていたのだし、同居人が気に入ったならその犬と暮らせばいい、そう思った。それでもう、どの子を家族に、そういうところへ話が進んだ。同居人に抱かれるとおとなしく腕の中に収まる甘え上手なクリーム色の犬がいて、同居人は明らかに嬉しそうで、どう見てもその犬に決まりだと思う。けれど、同居人は頭のおかしい感じの暴れん坊な茶色の犬を私が気に入っていることに気付いていた。そして、二匹とも連れて帰ろうと言い出して、それはどうかと思うと言ったのだけど、もう既に一匹失った虚しさがある、更に失う理由がない。どちらかを選んで暮らしても、何かあるたびもう一匹はどうしているか思うに違いない、犬を見るたび誰かを我慢させたと思うのは馬鹿らしい、それぞれに気に入った犬がいるなら、どちらも家族にすべきと言うのだった。理屈としては解るけれど、経済的に成り立つのか疑問だと言うと、今までもどうにかなったし、これからもどうにかなる、大丈夫。と根拠なく、でも自信ありげに言った。大きなお金が動くとき、同居人は大抵こんなふうに楽観的に決める。苦労はあるものの、確かに破産せずにいて、得たものは手にできてよかったと思うものばかりだ。それでクリーム色の犬と茶色の犬とを家族にしようと決めた。

犬には断る権利もなく、ウチへ来ることになった。さすがにファストフードのようにその場で持ち帰りとはならず、一週間後だったか十日後だったか忘れたけれど、2012年1月15日に連れ帰ることとなった。拙宅から私鉄の駅近くまでクルマで出かけ、私鉄へ20分くらい乗り、ペットショップへ迎えに行った。フード、おやつ、玩具などをもらい、保険加入の手続きをして、犬の入った箱を受け取った。箱はスヌーピーの家を小さくした形で、犬小屋型と言えば早いか、青い段ボールで出来ており、屋根の部分に横に広い楕円の穴があって持ち手となっていた。犬と暮らすことが夢のようなのだけど、犬を紙箱へ入れて電車に乗るなどということは想像もしなかった。そして、箱の犬、暴れん坊と思った犬は箱の中でおとなしく、ちゃんと生きているのか、空気穴を何度も覗き込んだ。おとなしく同居人へ抱かれた犬は大層暴れて、降りる駅へ着く前に箱へ大きな穴をつくり、駐車場のクルマへ行くまでに穴からすっぽり頭を出した。豹変した犬に、私が、猫を被っていたのかなと言うと、同居人はそうまでしてウチへ来たかったんだよねと犬の頭を撫でながら白い息で言った。小雨に雪の混じる寒い日だった。
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