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狐の火ともし狐の絵筆狐の手袋 [日々の暮らしで思うこと]

Monday, 4th January 2020

気付くと私鉄と書いてしまうけれど、誰も困らないように思われ、今後も書き続ける気がする。JRでなければ私鉄と言っていてよい気もする。幼い頃、バスで出かけるのが大森で大森の隣の駅が蒲田だった。もしかすると、蒲田へ直接行くバスがあったかもしれない。小学校へ入ってからだった気がするが、ある日、年上の友達何人かと蒲田の縁日へ行くことになって、家へ帰ると母がいなかった。私は何も考えず抽斗の「おかあさんの財布」と呼ばれるものから五百円を取り出して出かけた。バスに乗ったのは確かで電車に乗った憶えがない。運賃をどうしたかも曖昧だ。親の財布から金を盗むくらいなので無賃乗車したかもしれない。小学校へ入ったからと切符を買おうとして背が足りず、通りがかりの大人は小学校へ入ったら買えるようになるなどと度々無責任に言った。もう入っているのに。そんなサイズ感で大人の脇に付いて行けば難なく無賃乗車できたと思う。小学生のひと群れとして誤魔化して乗ったかもしれない。そうして子どもだけでいつもより遠いところ、蒲田の縁日へ行って、楽しかった。五百円で、火薬部分が何色かに色分けされた、多分、虹の七色だったと思うマッチと用途不明な感じの1mくらいの金色の鎖とあともうひとつ何かあった気がするけれど、思い出せない、兎に角要らないものだけ買って、何故か楽しかった。縁日に付き物の屋台の食べ物などは何も買っていない。家へ帰ると父に叱られて、暗くなるまで帰らなかったからだと思ったら、それに加えて黙って遠出したこと、おかあさんの財布から五百円を持ち出したこともいけないらしかった。そう叱られるまで勝手にお金を持ち出したことはなかったけれど、持ち出してはいけないと知っていてしなかった訳でなく、偶々、機会がなくてせずにいて、蒲田行きで叱られて初めていけないことと知った。「おかあさんの財布」とは呼ぶものの、家族の食べ物や使う物を買っていて、みんなのお金が入っていると思っていた。こんなことがあって、小遣いや何かが決まったのかもしれない。初めての小遣いは月曜日から土曜日が三十円で日曜日が五十円だったと思う。大抵のものを好きに買ってよかったけれど、酷く甘い食べ物と毒々しい色の食べ物は買ってはいけないと言われた。甘い物はお腹に虫が湧く、毒々しい色の物は毒だという説明だった。そう教わると、威張って言うことではないが、見張られずとも約束は守った。

かつての友人マキちゃんは女優志望で劇団に入り、三年やって芽が出なかったら家に帰って結婚しろという親との約束を守って夢を諦めた。レギュラー出演の番組があったと聞いて、後年、再放送の刑事ドラマを何話か丹念に見たけれど、一切映っておらず、出演者として名前が表示されることも無かった。レギュラー出演の女性はふたりだけだったのに、撮影完了の飲み会にもうひとりのひとしか呼ばれず辛かったと聞いたときは意地悪な話のように思ったものの、放送されたものを見ると、つくったひとたちからするとエキストラだったのかもしれない。彼女が運転していたというミニパトも何話か見て数秒しか映らなかったので。そうとは知らず、社員食堂の昼食で、そんな有名人とごはんを食べるなんてと言ってしまい、考えようによっては嫌みなのだけど、マキちゃんは大したことないから気にしないでと言い、にっこり笑った。素直に喜んでいたと思う。自分の美しさを利用して金持ちと結婚すると言う計算は好きになれなかったけれど、そういう卑屈でないところは好きだった。

女優というのは看護婦みたいな感じで、もう使わない言葉かもしれない。女優だから顔は傷つけないで、というような台詞は多分前世紀のこと。それでも、俳優とか役者と言い換えながら女性はまだ美しさ若さを求められがちで、男性は見た目が今ひとつでも歳をとっても個性とか雰囲気で認められやすい気がする。何でこのひとはこんなに活躍をと疑問に思うと身長が高い。女性に比べると男性のほうがザルの編みが細かく何かしらで残る機会があるように思う。それから、男女を問わず、誰もが認める美しさでない俳優には安直に実力派、演技派、個性派と言うと思う。実力無い派、演技できない派、個性無い派がいるかのように。そして、真に実力、演技力、個性のあるひとに、実力派、演技派、個性派の看板は要らない。

成人して何年もしない頃、中二の時からの友人と熱海の温泉旅館に泊まりに行ったことがあった。二間続きの離れか何かだったと思う。何歳と踏んだか知らないけれど、その部屋へ泊まる私たちくらいの女性ふたりという客はなかったらしく、仲居さんにも番頭さんにも女将さんにも珍しがられた。友人は目鼻立ちがはっきりしていて、化粧をすると大人っぽかった。それで出した答えが、友人が浅野温子で、私は付き人で身の回りの世話をしながら修業する女優の卵というもの。ひとりで部屋を出たとき、仲居さんと番頭さんに呼び止められ、貴重なお休みをお忍びでお越しいただきと付き人と思い込み礼を言われて、私に浅野さんのサインをと頼んできた。坂道に苦慮する赤いミラ(友人の軽自動車)で来ますか、浅野温子が運転してと問うと、お忍びですし、お客様は運転免許を取れる歳ではないですしと勝手にU18とは何なのというところだけれど、女優の卵に見えるのかとちょっと嬉しかった。何かしら美貌の欠片が微塵でもあるかに受け取って。友人からはちゃん付けで呼ばれ、私はさん付けというのも影響したと思う。中二のときから、そう呼び合っていた。では聞いてみますねと思わせぶりなことを言って部屋へ戻り友人に言うと「浅野温子か、悪くはないな」と彼女もまあまあ喜んだ。宿帳に書いた通りの者なのでとサインをお断りしたけれど、含みのある頷きで、あくまでもね、そうですよねなどと言って、理解を得られたかわからない。こちらとしても、どうしても解かなくてはというような誤解ではなかった。



夕方、前日に続き、Pさんが夕飯を届けてくれた。受け取りに出て、犬のごはんを用意して、もらったごはんを食べ始めて、というところで息苦しさと怠さが耐え難い。呼吸も耳の聞こえも脈もおかしく、パニック発作に違いないと思うものの落ち着かない。肝っ玉が小さいこと、小さいこと。どうにも苦しくてPさんにSOSを出して、犬と犬とお邪魔して居間を占拠した。

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