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パンク侍、斬られて候 / 町田康 [町田さん]

パンク侍、斬られて候

パンク侍、斬られて候

  • 作者: 町田 康
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2004/03/18
  • メディア: 単行本
■長篇・三省堂ひとり相撲の巻き 18/MAR/2004 : サイン会整理券を手に入れるまで

電話の応対が良かったから
そんな理由で町田さんのサイン会は三省堂を選んだ。
何時から並べば良いのか見当がつかず前泊したのは山の上ホテル。
「サイン会の整理券を貰うため早朝出入りする」と断っておいた。
目が覚めると落ち着かず、そんな時間に誰がと思う一方で
せっかく前泊して整理券を貰えなかったら等と迷いは尽きない。
迷うなら行ってしまおうと無理やり同行者を起こして五時四十分にホテルを出る。
事情を話してあるフロントは励ますように「行ってらっしゃいませ!」と
早朝から元気が良く、私も気分が良い。

書店に着くとそれらしきひとは見当たらない。これは一番乗りってやつですよ。
少々、浮かれる。
後、もしかしてここは違う場所では?と心配になり書店の周りを巡回。
やはり、三か所も出入り口があるではないか。
ひとつの小さいとこはまあ無視するとして、もう一か所は油断ならない。
あとから来たひとに一番乗りを称されても適わない。注意せねば。
十分置きくらいに同行者と交代で巡回。
それにしても誰も来ない。
新聞配達と路上生活者風のひとがこちらを不審そうに観察するばかり。
七時を過ぎた頃だろうか
巡回から戻った同行者があっちの出入り口に数人発見との情報をもたらす。
「君はここを守っていてくれ」と申しつけ「あっちの出入り口」に行ってみる。
確かに二人の男がいる。
ひとりは何だか知らないがひとりでにやにや笑い心持ち酩酊した感じ
もうひとりは背負い袋紙袋ウエストポーチ。
何故はじめからそう攻撃的なところから考えるのかと思うが
体格もいいし何笑ってるのか不明だしアブなそうなのはにやにや笑いで
袋持ちを先に攻めてもにやにや笑いが加勢して強気になる可能性もある。
にやにや笑いを先に攻めて手懐ければ袋持ちは落としたも同然と判断
にやにや笑いの前に一直線で進み出る。
「あなた、パンク侍のひと?」って私にしてみれば普通の質問のつもりだったが
相手の慌て具合からするとあまり普通ではなかったようで
一瞬でにやにや笑いが消え
彼の後ろには植え込みしかないのを知っている筈なのに
植え込みを探って自分が言われているのか確かめる始末。
やはり自分が聞かれているのだと解って「え、オレ?」と聞き返す。
「そう、あなた、パンク侍?」「違いますけど」
そのあとも何人かに同じことを聞いたけど怖がられるっていうか気の毒がられるっていうか
私は「あなたは『パンク侍斬られて候』を買いに来ているのですか」
と言ったつもりなんだけど相手には全然通じてなかった。
世の中ってそんな具合か。

八時を過ぎても誰も来なくて防寒具の類が邪魔となる。
それらを部屋に置いてくるため同行者に留守を頼み一度ホテルに戻る。
「いかがでございますか?」フロントで聞かれるけど誰も来てないなんて言って
町田さんの評判を落としても困るので「どうにかっ!」とか返答。
ホテルから戻っても書店前には誰も来てなかった。
どうも張り切り過ぎたと思うが部屋でそわそわしてるよりうんと良い。
ましてや一番乗りなんて、あはは笑いが止まんないって、それは少し事実から逸れる。
九時を過ぎた頃、二番手がやって来た。奇麗な女性。
ようやく仲間が来たのだと「あなた、パンク侍のひと?」と聞くと否定される。
じゃあ何のひとなのさ?と思っていると
「今日、町田康のサイン会の券配るんですよね?」とか聞いてくる。
書名も知らずに来たのか、そして呼び捨てかと無言でいると同行者が軽く頷く。
奇麗な女性はそれがわかると鞄から剥き甘栗を取り出し袋を破り
空を仰ぎながら甘栗を食べ続けた。時々、携帯で誰かに連絡取りながら。
その次に来たのは落ち着きの無い男女ふたり組。
一瞬も同じ場所に立っていられないというように動き回ってくれて賑やか。
その次に来たのは文学少女風。
携帯のカメラで懸命に三省堂前で待つ自分の写真を撮っている。
彼女のカメラには「XXの私」「OOの私」って私写真ばかり写っていそう。
勝手な想像だけども。
その次に来たのはやたら内気な印象の少年。
並んだかと思うと消えて消えたかと思うと戻ってきてって感じ。
とにかく私も含めてはじめの間は奇人・変人大会っぽかった列には
開店時間が近づくときちんとした大人みたいなひとも並んだりしていた。

整理券は同行者と合わせて四枚入手
四時間二十分も何かを待つことが私にできると知り
そんなに前から並ばなくても大丈夫らしいこともわかり
何よりひとつひとつのできごとが面白かった。
手にしたのは整理券と本であるが得たものは他にもある。
書いた日 :4/MAY/2004 修正 :14/APR/2008

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

  • 作者: 町田 康
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫


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