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なくしたものは、ない。 [ずっと、ずっと、前のこと]

Friday , 23 January 2009

高校受験は担任教師と私だけで話し合う。友人とは目指すものが異なり、頼る家族はいない。
「どうする?」「特に希望は無いですけど、一生働ける仕事に就きたいです」
「お前なら、何にでもなれるよ」
特に成績が良いとも言えなかったのだが、担任や周囲は私を賢いものと買い被っていた。

はじめに目をつけた学校に担任とふたりで見学に行くと思いのほか難関の気配がして
帰りの電車で「何か、やばいな、ギリギリだな」「うん、ギリギリ駄目なほうの」
「頑張ってみないか?」「危ない橋は渡れません」などと話した。
元々、家で勉強する習慣がなかったのだが、その頃は荒んでいて余裕がなかった。
神経の昂った母親が料理目的ではなく包丁を持って出迎えるなんてことが茶飯事で。

寄り道したが「安全圏」「将来性」「公立」に的を絞れば、受験校を決めるのは簡単だった。
数ある中から的を絞ったのは担任教師だけれども。
その隙に私は学校をサボりライヴに行ったりして担任に叱られたが
「明日生きている保証はないんですよ」なんて屁理屈で見逃してもらった。

同じ学校を受験したのは8人だったと思う。
他の7人からは「もっと上を狙ってよ」などと既に合格を決めたかのように言われたが
賢くもなく、勉強もせぬ私は「安全圏」の受験に失敗する。

結果を学校に電話した。「XX校の8人です」「はい、それで」「全員、落ちました」「え?」
「落ちました、8人とも不合格」「あの、とにかく学校に帰って来て、みんなで」「はい」
全員不合格となると進路指導に落ち度はと責任問題に発展しかねず、ちょっとした騒ぎだった。

学校に戻ると泣き出すひともいた。私は「気の毒に」などと他人ごとのように見ていた。
私に駆け寄る担任が「何だ、それ」と指したのは私が持つ和菓子屋の包みである。
受験校の傍に店があり、ここへ来ることはもうないだろうと覗いてみたのだった。
「すあまです」「すあま?」「はい、食べたことがないんで買いました」「お前って・・・」

すあまは、へにゃりとしていて噛み応えがなく、うまくも何ともなかった。
すあまは食わない。ただ、それだけ覚えて、担任が探し出した別の学校に入学した。
「ここならトップが狙える」などと見当違いな励ましを受けて。
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タグ:すあま

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