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長い長い放課後。 [ずっと、ずっと、前のこと]

Saturday , 26th June 2010  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

小学生のとき。
事情通の同級生キカはありとあらゆる情報を
転入生の私に与えてくれた。
私は入学時からのあれこれを知り
その話は知らぬなどと疎外感を持たずに済んだ。

ある日、そんなキカの情報にも漏れがあることに気付いた。
ミキは同級生たちに、裕福でない家庭に育つキカの姉が
彼女の家を訪れて金を盗んだなどと触れ回っているのだった。
キカの前では親しげに振る舞いながら。

キカに恩を感じていた私は
そのまま放っておく訳にはいかぬと思い
ミキにキカの悪口はやめてくれと頼んでみた。
ミキは事実を言って何が悪いのだと言い
あなたも何か盗られぬよう気を付けろとも言った。

ミキは駄目だと考えて
今度はキカにミキの言動を伝えることにした。
「ミキがキカのお姉さんのこと」と言いかけたとき
キカは「分かってるから言わないで」と制した。
「ひねちゃん、そんなこと聞きたくないよ」
そう言うキカのほうへ顔を向けると
彼女の頬に涙が伝うのが見えた。

そのときになってようやく私は
キカに情報漏れなど無いことを知った。
私が余計なことを口にしてキカを傷付けたことも。
事実を言って何が悪いと言うミキと変わりないことも。

「ごめん」と言ってキカの正面に立つと
キカは「いいよ」と言って私の肩を抱いた。
私を抱くキカからはほんのりと食べ物の匂いがして
「キカ、納豆食べた?」と聞いた。
「ひねちゃん、あなたって子は」とキカは笑った。 2010-08-28 00:05 更新

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