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自由のための非常ボタン。 [愚]

Thursday , 21st October 2010  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

ドリンク剤の類を飲む習慣はなく
数か月に一度くらい主に好奇心から嗜む程度だ。
その数か月に一度が訪れ、そうした飲み物を買った。
通りすがりの自販機で買った。

ドリンク剤的なものは
金属の蓋をねじ切って開けたときの手に残る感触と音が
飲み物の魅力の半分を占めているように思う。
ブリキか何かのペキペキ裂けゆく様はどこか爽快である。

が、その飲み物は握った手が空回りするばかりで
栓の開く気配が一切なかった。
キャップ装着などは機械化されているだろうけれど
ドリンク工場一番の馬鹿が生涯一番の馬鹿力で締めた
そんな図の浮かぶ強固な栓であった。

栓が開かぬとなると
途端に喉がからっからに渇いている気がして
飲み水を一滴も持たずに砂漠を行く旅人の思い
今すぐこれを開けて飲まねば死ぬと
喉から手の出る勢いで蓋をこじ開けたくなる。

これは歯を使うしかない。
するする空回りする手を見てそう思った。
切羽詰まった分、最終兵器へ容易く手が伸びる。
噛む力には妄信的自信があるのである。

自販機から取り出した小瓶を、小瓶の金属栓を
そのまま口へ入れるのもどうかと思い
上着の袖口で包み込んでから瓶に噛み付いた。
はじめは手と同じように空回りしたけれど
最後は犬歯が決め手となり開栓に成功した。

馬鹿が、手間取らせやがって。と、ひと息で飲み干す。
時間と労力に比して何とも呆気ない。
悪戦苦闘が嘘のようである。と、上着の袖に穴を見つける。
嘘でしょうと冗談めかしても本当の本当に穴はある。

決め手の犬歯が愛着の上着に穴を開けていた。
虫食いほどの穴を開けていた。
ひゅう。秋風が吹く。 2011-10-10 22:55 更新

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