リンボオダンスが踊れない。

Thursday , 18th November 2010　　gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

バラバラ事件というのは出所不明の木の枝が
其処彼処へ大量にばら撒かれた一件を私が勝手に呼ぶのだが
それから最初の可燃ゴミの収集日
太さ腕ほど長さ２メートル弱に切られた木の枝を３本
ずるずる引き摺りゴミ集積所へと運んだ。
可燃ゴミとして片付けるつもりで。

枝と言うより木に近い
可燃ゴミと言うより粗大ゴミに近い巨大なブツを
集積所に向かって引き摺る私にひとりの男性が
「それは拙いよ、デカ過ぎるよ、もっと短く」などと言う。
視線を合わせぬまま、咎めるように言う。

そこで私はあのバラバラ事件を知らぬのかという具合に
拙宅庭に何者かによって勝手に捨てられたこと
拙宅には植木バサミ、のこぎりの類がないこと
集積所へ捨てるほか処理の方法を思いつかぬことなどを
彼に話した。

持って帰れと言われるだろうか。
これらを引き摺り、来た道を戻るのかと思っていると
「おじさんが切ってあげよう」と彼は言った。
「いいの？」と訊くと「仕方ないだろう」と答えた。

礼を述べ私は手ぶらで家へ戻る。
あのひと、喋れるのか。などと思いながら。
巨大枝を捨てに行ったのは午前８時前後のことだが
夕刻以降の彼は虚ろな目をして大抵半裸
言葉を交わすことなど無いものと思っていた。

家へ戻り玄関の扉を閉じた途端、外の明るさが遮られ仄暗い。
暗くなってそう感じるのも妙だがそこで目の覚めた感覚がして
先ほどのことが夢のように思えてくる。
刻々と現実味が薄れてくる。

バラバラ事件の３本は確かに消えていたが
半裸人の声はもう思い出せなかった。
そのみずみずしさに悲しみを覚えた日も今は昔
巨大枝が片付けばそれで構わぬ。薄情。 2011-11-07 08:05 更新

タグ：半裸人 おじさんが切ってあげよう さようなら、枝