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時間切れ [生活]

幼い頃から母と私は気が合わなかった。
母はこどもに愛情を注ぐのがとても下手なひとで
愛情の欠片も持ってはいないのではと思うことが度々あった。
それを辛いと感じなかったのは私も母に愛情を持てずにいて
私は父の支えだけを頼りに充分生きていけると思っていた。
事実そうして暮らしていたのだが思いのほか早く父は他界した。
その後数年を母の下で過ごしたが
ある日母は家を出て行きしばらくして再婚したと知った。
私は再婚した彼女に何回か会いに行った。
会いたいというよりはわだかまりの無さを知らせたい気持ちで。
しかし本当にわだかまりがなかったのかはわからない。
徐々に彼女に会うことはなくなっていき彼女のことを忘れていった。
頭の片隅にも存在しないほどに。
そんなとき母が事故死したとの連絡を受ける。
少し迷ったあと通夜に出向いた。
集まった近所のひとたちから口々に
母が毎日のように私に会いたいと言っていたと聞かされる。
彼女が私に会いたいなどと言うだろうか。
それは薄情なこどもを責めるために用意されたものかもしれない。
しかし責めるほどのことをさせるには
それに近いことを一回くらいは言ったのではないか。
赤の他人より遠い存在だった母をほんの少し身近に感じた。
以来母は私の罪悪感とともに私の胸のうちにある。
実際に言ったかどうかわからない「会いたい」の言葉と一緒に。
タグ:母の日

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