常識を備えるのは難しいので諦めました。

常識は難しい。
こう考えるのが妥当であると自信を持てるなら良いが法律にも抜け道がある訳で
常識となれば当然判断のつかないことがある。日常的に。

例えばニット製ネット素材の衣類をお召しの六十歳くらいの女性。
ネットの穴は１．５センチ角ほどあって海産資源を守るにはいいかもしれないが
漁に使われていたのではなく洋服として身に付けられていた。
直に地肌へ一枚きりで。
この場合これは完成形と見るべきなのか何か忘れていると考えるべきなのか。
陽射しの強さと颯爽とした歩き方から完成形と見て素通りしたが正しかったろうか。
仮に素通りしなかったとして私にできることが何かあったろうか。

或いは十代とも三十代とも見える年齢不詳の女性。
季節を無視してボア付きのロングベンチコートを羽織っている。
内側のボアがわかるのは前のボタンを留めていないためである。
コートの中はＴシャツとローライズのデニムパンツだ。
Ｔシャツの裾はウエストの上から切り取られている。
デニムパンツにいたってはモモの付け根より上かと思う位置で切ってある。
そのくらいのことであれば外は温かく中は涼しくしているのだろうで済む。
しかしそのように簡単に納得されてはと思ったのかどうか知らぬが
パンツの裾左右両側からペロリと舌を出しているのである。
勿論常識的に考えて彼女の舌がそれほど長いことは無いだろうし
左右に分かれているというのも現実的な判断とは言えない。
飛び出しているのはポケットである。
裾は大胆に切り取ったもののポケットには愛着があったのだろうか。
にしても裏地の見えるポケットを足と一緒に覗かせるというのはどうだろう。
私の知らない世界で流行っていたりするのだろうか。

常識はわからない。そう思っていたほうが楽である。

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