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梅雨の遠足-江ノ島でサザエの壷焼きに涙。 [愚]

Saturday, 14 June 2008

眠らずに明けた朝はそこそこ天気がよかった。
体調も気分も悪かったが約束で江ノ島に出かけることになっている。
行きたいのか行きたくないのか、行って大丈夫なのかわからない。
実際に行くという気分にならぬまま支度をする。
迎えのクルマに乗り込んでも、まだ、出かける決心をしていなかったが
助手席の私の気持ちなど関係なしにクルマは前進していく。

私を見て「顔色悪いね?大丈夫?」などと運転手は言うが
アクセルを踏むのをやめる様子はない。
踏むのをやめられたところで、どこにも着かない。それはそれで困るから黙っている。
海沿いの道はさほど混んでおらず夏の渋滞からすると嘘のように順調な流れで
思いのほか早く着いた。駐車場も空いている。梅雨に似合わぬ太陽が眩しい。

観光客相手の店 いい感じの部類

参道

前に来たのがいつだったか思い出せぬほど久々に土産物屋の並ぶ参道を歩く。
俗っぽさが情緒といえなくもなかったが、それが進み過ぎた気がする。
あちこちに猫の寝そべっているのが興味を引く他はどうにもありきたりである。
どこでも見かけそうなキーホルダーに江ノ島と書いて売り
どこでも見かけそうなソフトクリームを名物とか何とか呼んで売る。

鳥居

交番の猫

交番の猫

鳥居へと続く階段を上るとそこには罰当たりではあるが新参者という雰囲気の石像がいて
何ていうか、極少体力を使って損したくらいの気持ちにしかならない。
私の体調を気遣い同行者はエスカアの利用を提案する。エスカアは有料の乗り物である。
というと、聞きなれぬ名に、どのような乗り物かと期待されるかも知れぬが
駅やデパートメントストアなどでは「エスカレイタ」と呼ばれる動く階段である。
これに乗り上へ上へと移動する。閉ざされた空間に伸びる階段は異空間へと続くかに見える。
しかし行き着く先は華美な装飾の境内であり異様さを感じても見慣れぬ風景に過ぎない。

エスカア

庭園

エスカアの乗り継ぎで天辺付近へ辿り着き、サムエル・コッキング苑という庭園を覘く。
見るひとが見れば感ずるところがあるのかも知れぬが私には退屈であった。
馬鹿と煙はということで展望台へと進む。苦手なエレベイタに息苦しさを感じながら。
展望台の眺望には嘘臭さがなく、ようやく気分が晴れる。
更に階段でもう一階上へ行けば周囲は柵があるのみ、風に吹かれ海の音に耳を傾ける。
靄がかかっていて水平線も富士山も見えなかったが誰かがそれを言うまで気付かなかった。

展望台から海

展望台を下りると同行者は小腹が空いたと言って「みそおでん」なるものを買う。
串刺し茹で蒟蒻に味噌のタレが塗られたものである。
一口齧ると「あっ」とか言うので火傷したかと案じたが蒟蒻が冷たかったらしい。
茹で上がらぬ蒟蒻がおでんとはどういうことか。
「返品する?」と聞くが同行者は揉めごとを嫌う性質で首を横に振るのでそれに従う。
見回せば団子をホットプレートで焼いていたり全くのところ家庭内イベントのノリで
金を取るところだけプロに徹するアマチュア集団なのである。

とんび

であるから、やめておけば良かったのであるが、そもそも江ノ島へ来たのには理由がある。
普段、食べ物に拘泥せぬ私が「サザエの壷焼きが食べたい」などと気の迷いで口走ったのを
同行者が聞き逃さなかったのである。
同行者の「サザエを食わせてやらねば」その熱い一念でここまで来たのであった。
今更、要らないとは言えなかった。自棄になって、ついでに蛤もとありもせぬ食欲を見せる。
先に渡されたのが蛤の串焼きで「あっ」と言うほど冷たくはないが温かくもない。
この場で焼いているように見せかけて火の通ったものを温め直しているらしい。
味も香りもせぬ蛤にサザエの出来具合には何の期待も持てなかった。逃げ出したかった。

はまぐり

時間は一方向へ流れ、頼んだサザエは海へ戻ることなく私の手元に届く。
磯、サザエ、醤油といったそれらしき香りは一切せず殻の焼け焦げたニオイだけがする。
目を閉じて噛み付いてみる。噛むと口の中で何かが音をたてるが旨みも味わいも無い。
同行者が顔を覗き込むので「何かジャリジャリ言う」と伝える。
美味いとか不味いとか考えずにとにかく百回噛んだら飲み込むってことに集中した。
サザエはまだ八割くらい残っている。
サザエ粉砕機になったつもりで百回噛んでは飲み込むを繰り返してかたづけた。
その間は荒んだ気持ちになっていたのでベビーカーに乗せられたひとにメンチ切ったり
丸く膨らんだ雀を見て、あっちのほうが美味いかもなどと考えていた。
食べ終わったのを見計らって同行者がまた感想は?って顔をするので
「もう二度とサザエが食べたいなんてことは言いません」と涙目で答えると
「無理して食べなくていいのに」と言われた。

百回噛め さざえ

テリトリに戻りデパートメントストアのレストラン街でおランチをいただく。
同行者兼出資者から「こんなものが美味い?」と念を押されるが
最近、何かを食してこれほど美味いと感じたことはなかった。

タラバガニクリームパンシチュウ


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