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セキセイインコ [過去記事/隙間三行]

小学校の自習で「作文」と聞くと
同級生たちは決まって不満の声をあげた。
私はあれこれ考えるでもなく
決められた時間のうちに原稿用紙は適当に埋まり
苦手と感じることはなかった。
書くのは思いつきで
本当のことかどうかは自分でもわからぬし
本当のことかどうかを気にしてもいなかった。

ある時、いつもの思いつきで、小鳥のことを書いた。
小さくてかわいい生き物だとか、鳴き声を聞くのが好きだとか。
持ち帰った作文を父が読み、そんなに小鳥が好きかと訊く。
「それはただの作文で、ほんとのことじゃない」
答えを聞いた父は私を嘘つきにしたくないと
真っ暗な街に、小鳥を買いに出かけた。
飼ってみると小鳥はかわいくて
書いたときは嘘だった作文が嘘ではなくなった。

何か書くときはいつも
それが一番重要なことのように
本当の気持ちか、嘘が無いか、確かめる。
そうした自分の性分と信じていたモノさえ
父に与えられたのかも知れなくて
忘れようとか、憶えていようとか
そういう意識のはたらかないところに
父はいる。

共通テーマ:日記・雑感

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