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莫斯科の騾馬。 [愚]

Thursday , 13 august 2009  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

エレベータのドアが閉じかけたとき
乗る気を見せて駆け寄るひとを見た同居人は迷うことなく「閉じるボタン」を押す。
「どうして?」と訊けば「何で?」と質問で返し
「こういうときは開くボタンを押すんだよ」と言えば「うん」と返事はするけれど
駆け込みエレベータのひとを見るとまた「閉じるボタン」で置き去りにする。
時に、扉にひとを挟んだりしても。澄ました顔で、条件反射的に。

もし汚れていなくても、私は本を読む前に手を洗う。
本を読むとき嗅ぐのは紙やインクの匂いだけであるのが望ましく
本を読む部屋に食べ物や飲み物は持ち込まぬ。
手を洗い準備万端、部屋の灯りをつけると私の机に笹かまぼこ。
同居人の神経を逆撫でる遣り口は念入りで、封が切られ、何の因果か2枚残してある。
ひからびて食べ物でなくなりつつあるが、そんなことは当然、少しも慰めにならぬ。

同居人は夜の街角でイラン人によく会い、話しかけられる。
「ケイタイアルヨ、サンカゲツスキナダケツカエルヨ」とか何とか。
何人で歩いていても彼らは必ず同居人を選んで話しかける。
顔見知りになると、あのペルー人は危ないから近付くべきでないなんて助言までもらう。
当のペルー人はペルー人で、あのイラン人は危ないなんて言ったりするのだけども。

後方のクルマの運転が気に入らぬと同居人は自分のクルマを斜めに止めて道を塞ぎ
降りて後ろのクルマのひととの会談を試みる。
「どういう運転してんの?」「急いでいたから」「そんなんじゃ納得いかないんだよ」
「じゃ、どうしたら?」「降りて土下座とかしてみる?」
相手のクルマは会話のためか何のためか、窓を開けてはいたが、ドアを開ける気配はない。
同居人は窓から手を突っ込み、そのクルマの鍵を抜くと、思い切り遠くへ放り投げる。


理解し難いことは少なくなく、互いに短気であったりするのだが、同居人とは喧嘩にならない。
ただの話し合いが他者には喧嘩に見えたりするらしいのだけれども。  2009-08-31 16:40 更新

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