SSブログ

帆船を瓶詰めにして。 [愚]

Thursday , 29th october 2009 gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

ボウルペンを左手に握らせると
要らぬ紙切れに書いたのは池田真理子で
誰だと考える隙なく私が保育園児だったときの先生と気付く。
電話中のこれといった考え無しに描く落書きのように
忘れたはずのひとの名がどこからかするりと出た。

彼女は「愛想のないところが私そっくり!かわいい!」と
私をくしゃくしゃに抱き
熟練の同僚から「不公平になります」と叱られたりして屈託がない。
私は確かに愛想がないが真理子先生は違う
そう思った。

『告白』は町田さんの小説で傑作と言われる作品である。
それとは無関係に、私は『告白』がとても好きだ。
主人公熊太郎をかわいい!と抱き締めようとは思わぬが
分身かと思う。幾度読んでも思う。
羊歯の手招きに「君もか」と言いたい。

「何で生きているのかなぁ」
「息を吸ったり吐いたりするからじゃない」
生きていると死ぬらしい
死ぬなら何故わざわざ生きるのだと言い直して訊く。
そんなことは自分でかたづける問題だが
ほかのひとがどう考えているのか気になった。
それを言ってくれるひとを見つけるより先に
息を吸ったり吐いたりの容易いと言うひとがあちこちにいて
そうだったのかと思った。

私は意識せずにいると呼吸を忘れ息が苦しくなった。息が・・・。
今なら呼吸が浅くなっていたのだろうと思うが
5、6歳のときはそうしたことを知らず
早産で生まれて未だに小さい
標準装備が装備されていないのではないか
注文書招待状入場券通行手形の類無しにここにいる
下手すると大変なことになるかもしれぬ
大変悪い感じの大変かもしれぬと思った。

そう思いながら下手をしでかす。
していいことといけないことがあるのを知っていて
その区別が出来たが
時に、してはいけないことをしなくてはならなかった。
「どうして?」「どうしても」
「絶対?」「絶対の絶対に」
どれほど気乗りしなくても私がそうすることは既に決まっていて
何故か知らぬが逃げ場がない。
望まず役目を果たして私は悲しく
「絶対の絶対に」と追い込むのが私自身では苦情も言えぬ。
どうにかしたいと思うが
自身の望みより強く行動を支配する心の中のものが何か分からず
抗う術を知らず少し気味が悪かった。

詰まらぬありふれた話で
私が私を特異なものとして
残念がったり得意になっている訳ではない。
熊太郎と私は同じ溝を滑るビー玉で
誰もが同じ溝を滑るビー玉である。
例外無しに、そうできている。

熊太郎に「君もか」と言いたい。
会ってみたい。
木の葉が呼ぶのだ。 2009-11-30 19:25 更新
告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)

  • 作者: 町田 康
  • 出版社: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 文庫


コメント(2) 

コメント 2

ira

ひねさん、こんにちは。

ひねさんが町田さんが好きだとおっしゃるので、
思いついて、なんかの文庫本を読みかけたのだけれど、
その良さが分かる前に、放り出してしまい、
その文庫本を買うときにあぁ、これを読みたいと思い、しかし高額なので危ない賭けはやめようと諦めたのがこの本でした。
今回この記事と同時に、他の書評も読んだ挙句
購入に至りました。

まだ数ページしか読んでないけれど、
太宰じゃ~ん。人間失格じゃ~ん。
というところです。
もちろん町田さんがその流れを汲む作家なのだと漏れ聞いているので?
(誰かの影響を受けない作家なんて居ないとだけど)文体は違うものの、客観的な語りの中に、突然主観が入ってくるとこなんかかっこいいです。
かっこいいよ。

自分の幼い頃と照らし合わせながら、読んでいるのでなかなか進みません。
熊太郎ほど思弁的ではない私でありました。
by ira (2009-12-09 12:43) 

hinemosu-bomb

こんばんは、ira さん。

雨の降る夜道を駆け出したくなりました。
寒さに震えていたりするのにね。
万引き主婦にはならなかったんですか。
あ、エコより無茶なんて記事を読んだので。
迷っていらしたなら、お贈りしたのになぁ、ほんと。
でも、間違いのない一冊を選択されました。と信じたい。
辿る道が分かっていてどっぷり浸かることの出来る作品です。

太宰か、考えたことなかったなぁ。
町田さんは唯一無二のひととか思っちゃって分析しないから。
書評も読みません。
万一、悪いことが書かれていたら心が折れちゃう。
羽がもげちゃう、墜落しちゃうって馬鹿。
そう、誰もが何かしら影響を受けたり与えたりしますね。
ひとと絡むって、そういうことだ。あはははははは

とここまで書いて貧血で真っ青。
おはよう、ira さん。呼吸を忘れていました。
せっかくなので告白です。少々気持ち悪い類の。

バナナブレッドの奥上君だったかな。
何故、好きなひとの読む本を知らないのだ
知っていれば同じ時間に同じ本を読むのにとかいう場面があって
ひねもそう!と強く共感したのでした。
記憶が曖昧なのは貧血の夜明けってことにしといて。
それでこれはその逆ヴァージョン。
ira さんがひねの好きなものを手に、くふふって笑っちゃう。
何か共有しちゃったよとかひとりでヨタゼタハッピイ。

ira さん、いつか、あなたなんて大嫌いだぁ!と言ってみたかった。
何故だか知らないけど言ってみたかったんだ。
でも、無理っぽいです。どうもありがとう。
寒い朝だ、冬みたい。
by hinemosu-bomb (2009-12-10 07:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。