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泳いで、沈んで、浮かんで。 [ずっと、ずっと、前のこと]

Monday , 2nd August 2010  gremz 自然破壊 森林破壊 大気汚染 オゾン層破壊

おばあちゃんが赤の他人の私を可愛がる
裏腹に実の孫娘へこれといった愛情を見せぬなどの事実は
全ておばあちゃんの都合で
耳の聞こえぬ少女と私を隔てる妨げとはならなかった。
彼女のおおらかな心頼りだった気はするが
時に午後の長い時間をふたりで過ごしたりした。

耳の聞こえぬ少女は唇を読むことができ
私が声を出さずに言ったことを唇の動きで難なく理解した。
金魚鉢の金魚が口をぱくつかせるのと変わりなしに
静まり返った部屋で言葉の通じる不思議は
到底、私には真似のかなわぬ魔法で
強く惹き付けられるものがあった。

しかし私の話を聞くには唇を読むに変わりなくとも
彼女は私が声を出すのを好んだ。
間抜けな声もくだらぬ話も
金魚鉢越しであれば輝きを帯びる錯覚がして
私は何かと口をぱくぱくさせたが
彼女はその都度、声を出すよう促す。

彼女にできることが私には魔法であるように
私にできることが彼女には魔法らしかった。 2011-02-02 18:35 更新

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