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ジャンクリストフペロチョン博士 [日々の暮らしで思うこと]

Monday, 21st December 2020

2003年12月から17年乗ってきたクルマを手放す。生活の一部を失うような気がする。もっと私が運転してよかったのだけど、同居人の運転するクルマへ乗るのが好きで、私が運転したのはほんの少し。あの助手席で眠ることが二度とないのを不思議に思う。なるべく平気な顔で別れようと思っていたら、さようならもありがとうも言わずに帰ってきてしまった。何があったか解らず、私の迎えを待っていたりしないか心配になる。クルマ屋の担当者は何でも電話してきてと言ったけれど、それは乗り換えたクルマの話で、前のクルマにお別れを言わなかったなんて電話は想定していないだろう。そんな電話はしないけれど。

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今まで何台かクルマを乗り換えて、都度、手放したクルマがある。それらの殆どは然程の思い入れもなく、すんなり乗り換えてきた。最後がどんなふうであったか憶えていないクルマのほうが多い。何事もなく送り出して遠ざかって行くのを見てわんわん泣いたのがワーゲンで、しんみり見送ったのがフェアレディZで、さようならも言わなかったのがWiLL Cyphaだ。心に残る三台を並べて車種的に馬鹿っぽいけれど、どれもいいクルマだった。さようならを言わなかったのではなく言えなかったのだと解ってくれている。そう思って間違いない。気がする。

WiLL Cyphaはその色から工夫もなく、みかんと呼んできた。愛車みかんで検索すると同様のひとが少なからずいる。今、オレンジ色のクルマはあるけれど、愛車みかんのようなオレンジ色はなかなかなく、朱色が混ざったような色が多い。どうしてもみかんの色がよく見える。こういう色のクルマに乗っていると駐車場ですぐ見つかるという利点はあるものの、何処其処で見たよと声がかかるような不利益もある。では、本当のところ何がよいかと言うと、気分がよい。スカッと晴れ渡る空をビュンビュン飛んで行くような爽快さがある。色や形に依らず、好きなクルマに乗るというのはそういうこと。

新しいクルマの横へみかんを置くように言われて、ああ、記念写真がどうとか言っていたなと思ったけれど、ゴルフや何かの大会で賞品のクルマを渡す代わりの巨大な鍵型の工作物、あれを持たされるとは思っていなかった。マスクをして、クルマの間へ立ち、感情を抑える妙な顔つきで、巨大な鍵型金ぴか工作物を持つ、そんな写真が要るかしら。こんなこともあったと懐かしく思う日があるかしら。ピンと来ない。顔が半分隠れていたこと、偽鍵で身体が概ね隠れていたこと、その辺りが上手く作用するよう願うばかり。

みかんで最後に聴いたのはMUSEで、新しいクルマで最初に聴いたのもMUSEです。原始人が急に服を着て会社勤めをする感じなのだけど、携帯電話へ入れた曲を聴くことが出来たり、ハンドルでボリュームを調節したり出来る。鍵なんかポケットへ入れたままだし、記念撮影の工作物何よってくらい形が違うし、みんな、こんなすごいものに乗っていたのかと道行くクルマを見る目が変わる。そして新しいクルマなのだけど、色も形もおとなしく、そこから名付けるのは難しい。納車日に合わせ、果ての月ニーチェと呼ぼうと思う。

担当者から簡単に操作方法を習い、みかんからニーチェに後部座席の犬汚れ防止シートを移して、犬と犬を乗せて、空元気で歌いながら家へ帰った。胸の中の動揺が外から見て全く分からないように振る舞えて、その調子、頑張れと自分で自分を励ます。車幅、車長、ハンドルの感覚が掴めず、駐車に手間取るものの、これからだよねと思う。新しいクルマは新しいクルマ臭くて、タクシーに乗った感じがある。前世紀に、スクーターへ乗っていて酔ったことが何回かあって、自分で運転していて酔うなど聞いたことがないと言われたけれど、酔うものは酔う。考え過ぎてはよくないけれど、灯油を買いに行ったら匂いが複雑化しそうだなくらいは考えてよいと思う。何か、送風口に消臭剤とか付けてみようかな。

長いことカラオケに行っていない。行かぬ間に潰れた店もある。Pさんと一緒か、ひとりで行っていて、Pさんと行くと機械騙しと罵られるのが面倒だ。私がそこそこ高得点となるので、機械騙し。下手くそなのに。と言うけれど、私がどれほど心を込めて歌っているか、Pさんは知らない。大声を出して気を晴らそうくらいのひととは心がけが違う。随分前に、週に3回はひとりカラオケをする、陰でひとりカラオケの申し子と呼ばれるひとに、機械騙しと言われるけれど真心込めて歌っているんですと言ったら、丁寧に歌うと高得点というのはあるけれど、今の採点は精密なので単純にひねさんのほうが上手いのだと思うと言われた。ふふふふふ。今は家でクルマでひとりきりで歌っている。らんらら。

みかんは彼方此方ガタが来て、その上私の運転では考えもしなかったけれど、パニック発作が落ち着けば、犬と犬と私で、どこか遠くへ行くことが出来るかもしれない。十二月の旅人よ、ニーチェよ。二軒探して出会えぬ、金しゃりおにぎり焼さけハラミよ、空腹だよ。椎名誠と大瀧詠一の見分けがつかない。

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